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WEB作家「そとの人」の活動記録です
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【ニタリ】物には魂が宿るという話

2018/11/18追記

この記事はジョーク記事です。「ぬいぐるみ」「魂」なんてキーワードで飛んでくる人が異常に多いので、ことわっておきます。

部屋の大掃除をした話です。

 


 

 物には魂が宿るなんてことを耳にします。人形や動物のぬいぐるみなんかはその典型でしてね。ずーっと一緒の場所に置いておくと魂が宿って、いざ捨てようとしたり粗末に扱ったりすると不幸が起こるなんて話です。
 ……でもこれね、何も人形やぬいぐるみに限った話じゃないんです。
 ずーっとずーっと一緒にいる物なら、それがどんなものであっても、魂は宿るんです。

 つい先日のこと。お盆にあわせて、久し振りにまとまった休みがとれたものですから、こういった時間を有効に使いたいなあと思ったんです。
 それでどうしようかなどうしようかなー……と思いまして部屋の中を眺めてみますと、非常に汚いんですね。
 仕事の関係上、毎日いそいそと暮らしてますとですね、自分の時間というのを中々作れませんでね。それに加えて元来が怠け者の性分でして、ちょっとしたゴミがどんどんどんどん溜まってしまうんです……おかしいでしょう? 本人には部屋を汚そうというつもりは全然ないのに……部屋が汚れていくんですよ。それで私はおかしいなあ、おかしいなあ、変だな怖いなあと思っていたんです。それはもう普段からそう思っていたんです。でも勇気を出してね。このままじゃダメだなダメだな、何とかしないとなあと思いましてね。
 それで今回の休みにね――大掃除をしようと考えたんです。

 間取りはワンケーでね。風呂トイレやキッチン前の廊下と八畳のリビング兼寝床という貧相な場所ですが、コンビニの容器やなんかで足の踏み場もない有り様で、備えつけの小さな冷蔵庫の、その中の小さな冷凍室には氷がうわーっと膨れ上がってしまっていましてね。
 最近冷蔵庫のドアが閉まらないことがよくあって変だなあと思っていたんですが、この冷凍室の氷が原因だったんですね。
 それで私はね、冷蔵庫にそーっと近付いたんです。先に冷蔵庫のドアを開け放して、氷を溶かしている間に部屋の掃除を進めようと、そういう風に考えたんですね。それで冷蔵庫のドアをスーッと開けて、水を受け止める容器をそーっと置いて、下には吸水シートをそれはもうおびただしい数を用意して敷きつめて――よし。と思いましてね。
 掃除を始めたんです。

 だけどね。どうしてどうして時間が過ぎていくんです。
 昼食後すぐに掃除を始めたんですがね、気づくとセミの声が消えていて、窓の外は薄ぼんやりと、ほんのりと暗くなっているんです。
 私は思ったんです。こんなに狭い部屋の掃除をしてるだけなのにこんなに時間がかかるなんて、何か妙だぞ。これは変だぞ……それにね、部屋の空気は湿度がものすごーく高くてじとーっとしてましてね、シャツがべたべたっと肌に張り付いてくるんです。おまけに何か妙な臭いもするんです。何かが腐っているような何とも言えない臭いです。私はおかしいなあ、嫌だなあと思って、背中にすーっと寒いものを感じながらも掃除を続けたんです。
 それでようやく部屋の掃除が済みましてね。さあ後は冷蔵庫の氷をどうにかしようと思いました。
 するするーっと冷蔵庫に近付いてさーっと覗き込みます。置いておいた容器には水がたっぷり溜まってましてね、敷きつめた吸水シートもびっしょりと濡れていました。
 ようやく分厚い氷の溶けた冷凍室を眺めまして私は思わず。
「ああ!」
 叫んだんです。冷凍室に何が見えたと思いますか。それはですね――シーフード、ミックスだったんです。
 私はシーフードミックスの袋をすーっと取り出して眺めてみますと、うわっと思ったんです。嘘だろ。おい。
 何度も何度も見直しました。
 こんなことがあるんですか。賞味期限が二年前の春の日付だったんです。
 どうやら異臭の原因はこれだったようです。プラスチック袋の容器に鼻を近づけますと、何ともいえない生々しい、吐き気のする臭いです。
 私はうわー、やばいな怖いなと思いましてね。中をよく見てみました。袋の中の濁った内溶液には、しおれた海産物の残骸が浮かんでゆらゆらーっと揺れているんです。
 私はその袋を指先でつまんでね、急いでトイレに持っていったんです。心なしかぬめる指で袋の切り口に手をかけます。息を止めてね、顔をそらして袋をちょっとだけ開けたんです。その時しゅばばばっと、袋から飛んだ水分が頬にかかりましてね、うわーっとなって、もう嫌だなあ嫌だなあ、怖いなあと思ったんです。何より臭いですし。
 それで何とか袋の内溶液をトイレに流し込みましてね。やけになって袋をぎゅーっと握り潰します。どうしてそんなことをするかというとですね。生ゴミは水分を切るように指定されているからなんです。それで嫌だなあと思いながらもぐぐぐーっと水分をしぼり出したんです。
 さあこれで一件落着。何とか処理を終えてゴミを出し終えました。
 ところがね……それからしばらくずっと、部屋に妙な腐臭が残っているんです。外出して部屋に戻って来るとその臭いがうわーっと鼻に飛び込んでくるんです。
 嘘だろ。もう捨てたはずなのに。何でだ何でだ嫌だな、怖いな……そして私は思ったんです。これは何かの呪いじゃないかなって。そうして、あっ! と思ったんです。
 気づいたんです。あのシーフードミックスと私は、二年以上も同じ部屋で一緒に暮らしていたんだな……そうかそうか。きっとあのシーフードミックスには魂が宿っていて、私が急に捨てたので怒ってこんな臭い思いをさせているんだな……。
 次の日、早速私は線香と花を買ってきましてね。冷蔵庫の前に供えたんです。そして手を合わせて必死に祈りました。
 急に捨ててごめんよごめんよ。お願いだから許してくれー、許してくれー……。
 それから一週間ほど経って、やっと臭いが消えたんです。

 物には魂が宿ります。ずっと同じ場所にあったものを捨てる時には、皆さん十分に用心してください。そうしないと、ぞうぞう恐ろしい不幸に見舞われるかもしれませんよ。


 ということで、自分の部屋はできるだけこまめに掃除しようと決心したニタリでした。
 
 

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